Case Report
-心臓手術の実際-

The documentary of cardiac surgery

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今回、心臓手術を受けることになった患者さん(仮称Aさん)の入院から退院までの経過を、
ご本人の許可のもと撮影・記録させていただきました。
実際の治療経過を記すことで、
この先、心臓手術が必要となる患者様たちの悩みや不安を少しでも和らげることにつなげられたらと、
Aさんのご厚意から今回のドキュメンタリー記事が実現しました。
ご協力をいただきましたAさんには大変感謝申し上げますとともに
今後も外来でのフォローアップ診療を続けさせていただきたいと思っています。

はじめに

さて、菊名記念病院は、東急東横線およびJRの菊名駅東口から5分少々歩いたところにあります。病院は綱島街道沿いの丘の斜面に建っており、入口は4階(写真1)と1階(写真2)にあります。4階が外来フロアとなっています。

写真1

写真2

入口を入ってすぐ右側に「入退院窓口」があります(写真3)ので、他院で紹介状を受け取っている患者様はこちらの窓口にお声掛けください。紹介状をお持ちでない方は「初診受付窓口」へお願い致します。
今回、Aさんは、他院で心臓の病気が見つかり点滴などで心不全は良くなりましたが、病気を手術で根治させるために当院へと紹介となりました。

写真3

まず、入退院窓口で、必要書類に記入していただいたのち、同じ4階フロアにある「入退院支援コーナー」(写真4)に寄っていただきます。ここでは、入院に際しての必要なサポートをしています。Aさんは、この日、持参した荷物が多かったため一時的にこちらに荷物を預けて、レントゲンや心電図など入院時検査のために院内を移動していました。

写真4

入院後

そして、いよいよ入院です。心疾患の方の入院病棟は「3B病棟」(写真5)となります。3B病棟には、心臓血管外科の他に循環器内科、総合内科の患者さんたちが入院しています。

写真5

手術までは、術前検査と体調を整えるために2〜3日間の余裕を持たせてあります。特に、心臓手術の場合、手術直前の状態を調べるためにいくつか必要な検査があります。Aさんは心臓の弁に病気が見つかったため手術直前にも心エコー検査を行っています(写真6)。

写真6

Q

手術前に不安で眠れない時は何か対応していただけますか?

A

睡眠導入剤を内服していただくことが可能です。お薬の種類もいくつかありますので不眠の状態に合わせて内服していただきます。

病気のことや治療について、外来で十分にお話していますが、入院後により詳しく、患者様、ご家族様に手術、輸血、麻酔、合併症の可能性、予想される入院期間などについて十分に時間をかけてお話ししています(写真7)。

写真7

手術当日

手術前の検査に特に異常を認めなければいよいよ手術です。前日の夜までお食事は摂れますが、手術当日は朝から禁飲食となっています。手術に際して、必要なことはすべて説明致しますがご不安なことも多いと思います。医師でも看護師でも誰でも構いません。何でも聞いてください。
 
多くの場合、手術は朝9時からとなっています。そのため、ご面会希望のご家族様がいらっしゃるときは、8時40分頃に3B病棟へ来ていただいています。そして、9時少し前に3B病棟を出発して手術室へと向かいます。
 
手術室は全部で5室あります。心臓手術は1番手術室(写真8)で行いますが、すべて看護師が付き添い、ご説明致します。

写真8

そして、いよいよ手術室に入ります。手術室に入るとテレビで見るようなベッドや器械が並んでいます。緊張する場面ではありますが、すべてご説明しながら手術の準備に入ります。
 
まずは麻酔の時間です。血圧を測ったり、心電図のシールを胸に貼ったりします。痛みを伴う処置は点滴を取るための注射をするくらいです。それ以外の処置は、出来るだけ麻酔がかかったあとに行うようにしています(写真9)。

写真9

麻酔まで頑張っていただきましたら、手術は私たちが頑張る番です。Aさんの手術は、私たちにとっては日常的に行っている典型的な手術でした(写真10)。それでも1mmとて気を抜くことは出来ません。手術は問題なく約4時間で終了しました。

写真10

手術直後

手術後は、集中治療室(ICU)へ入室します。手術直後というものは、血圧や脈拍などがとても上下しやすい時期です。多くの点滴が手術直後の身体を支え、多くのモニターがわずかな変化を示してくれます。ICUでは心臓を専門とする医師のチームが24時間体制で患者さんを診ていきます(写真11)。

写真11

手術翌日のAさんです(写真12)。麻酔から目覚め、リハビリスタッフから記憶や身体の異常がないかを確認されています。医師、看護師、リハビリ、薬剤師、栄養士らがチームとなって、入院患者さんたちがより良く、より早く病気から改善できるように支えていきます。

写真12

Q

手術後、キズはどのくらい痛みますか?

A

心臓手術のキズは、胸の真ん中に縦に入ることが多いです。この位置は、体勢によって大きく動くような部位ではありませんので、お腹のキズなどに比べると痛みはさほどではありません。しかし、痛みは人ぞれぞれですので、適宜、点滴や内服をしていただいて痛みを取るように心がけています。

Aさんはまだ酸素を肺に十分に送るためのチューブを鼻に付けていますが、手術翌日の午後には雑誌が読めるくらい回復しました(写真13)。

写真13

手術後2日目

手術後2日目のAさんと私(奈良原)です。もうベッドの端に座って足を下ろした状態で本を読んだり、リハビリでは立ったり座ったりの訓練も始めました。点滴もずいぶん少なくなりました(写真14)。

写真14

Q

面会はいつからできますか?

A

昨今は新型コロナウイルス感染症の問題があるため面会制限をしていますが、平常時は、いつでも面会可能です。ただし、ICUや病棟ごとに面会時間が決まっていますので、特別なことがなければその時間内でのご面会をお願い致します。

手術後3日目です。酸素と点滴はまだ付いていますが立ち上がってもふらつくことなく順調な回復ぶりです(写真15, 16)。食事は手術翌日もしくは手術後2日目から開始します。胃や腸の手術ではありませんので、流動食などではなく普通のお食事を摂ることができます。手術後の経過に問題ないため、Aさんは手術後4日目の朝にICUから3B病棟へと転棟となりました。

写真15

写真16

手術後5日目

手術後5日目です。3B病棟でリハビリスタッフと歩行訓練をしています。点滴がまだ多めですが酸素は流量の少ないタイプに切り替わっています(写真17)。

写真17

手術後7日目には点滴が終了しました。酸素は少量ですがまだ吸っていただいています。後ろに車椅子が写っていますが、Aさんはデイルームの椅子に座っていてくつろいでいるところを私と記念撮影です(写真18)。

写真18

Q

入院中に持ち込み食を食べることは可能ですか?

A

心臓手術のあとは、管理栄養士が入り、カロリーや水分、塩分量などを細かく調整しておりますので、原則、病院食を召し上がっていただきますが、お好みについては遠慮なく申し出てください。ただし、医師の許可があれば持ち込み食を食べていただくことも可能です。

手術後8日目

手術後8日目のリハビリの様子(写真19)。スクワット練習でしょうか。手術後1週間くらいでも患者様の状態に合わせて、できることはどんどん行っていきます。

写真19

Q

手術後は個室に入れますか?

A

病状が安定していれば個室へ入っていただくことも可能です。当院はベッド状況が混み合っていることが多いため、早めにご希望を伝えていただければ幸いです。病状を見て医師が個室への転室を判断致します。

手術後12日目です(写真20)。心不全手帳に体重や血圧、息切れなどの自覚症状を記載しています。もうすぐ退院なので退院後の生活に問題がないように準備をしていきます。

写真20

Q

退院時の支払いの概算はいつわかるのでしょうか?

A

概算であれば、いつでも計算することが出来ますので病棟クラークにお申し付けください。

いよいよ退院

手術後14日目です(写真21)。いよいよ本日退院。特に合併症もなにも起こらず、とてもスムーズな術後経過でした。退院前に病棟の看護師さんたちと笑顔で記念写真。研修医もちゃっかり写っています。

写真21

以後、Aさんは2か月に一度、外来受診しておりますが、非常に元気で職場復帰も早々に果たしています。今後は、内服処方と年に一度の心エコー検査でフォローアップを行っていく予定です。