Search By Tags
August 26, 2016
July 30, 2016
June 5, 2015
June 5, 2015
June 5, 2015
June 5, 2015
March 5, 2015
February 27, 2015
February 20, 2015
January 1, 2015
Recent Posts
Featured Posts
「奇跡の芽」
June 2, 2013

「関ジャニ∞の歌に合わせて口ずさんでるんですよ」 下石のその言葉に僕は一瞬耳を疑った、が同時にスイッチの入るときがきたとも確信した。 急性大動脈解離。突如襲ってくるこの病気は、身体の隅々まで酸素と栄養を運ぶ大動脈を侵し、心停止や脳梗塞、多臓器不全などなんでもありの上に、これまで病院にかかったことのない健康だと思っていた身体にさえ突然に起こり得る。 ショック状態となった身体は、血液循環が低下し脳虚血を引き起こすことがある。一刻を争う病態に、私たち心臓外科スタッフのやれることは、ご飯を食べてい ようと、寝ていようと、とにかく少しでも早く手術を開始することだ。手術に入っても、患者さんの心臓は人工心肺下に止められ、脳は、身体とは分離して血液 循環が行われ、極めて非生理的な状況に置かれている。37度前後あった体温は、約20度にまで冷却される。このとき脳波はまったくのフラットだ。 私たちの脳は、神経細胞同士が複雑なネットワークを形成することによって記憶や思考などの機能を獲得している。脳虚血にさらされたネットワークは、想像だ がきっとバラバラにされてしまったのだろう。結果、患者さんは記憶をなくし、記憶はおろか「見る」「聞く」「思う」といった基本的な機能さえも失った。 数年前、ある患者さんは、脳の高次機能(言語・思考・記憶・行為など)に障害を受け、脳外科医からは、これ以上の改善は期待出来ないと宣告された。小さな 子のいる若い奥様に、そのまま伝えるほかなかった。けれども、CT検査に写る脳は、不可逆的なダメージを負っているようには見えなかった。病棟看護師たち は、患者さんに伝わっているのか伝わっていないのかわからないが声をかけ続けた。 今、その患者さんは、PCを鞄に入れて海外出張に飛び回っている。だから僕らは知っている。バラバラになった神経細胞でも、死んでいなければまたつなぎ合わされるということを。 思考を失っていた患者さんが、今、「おはよう」と言い、笑顔を見せてくれている。 関ジャニ∞のCDをかけた看護師さん、その価値は pricelessですよ(^^)
Tags: